世界に10万種と数ある木材の中で、奇跡の性質を持った『桐』についてお伝えしたいと思います。
私達がプロフェッショナルとして、桐と共に製品を作るにあたり、学んだこと、実際に感じたことを共有いたします。
近年は、桐の事を知る人がとても少なくなって来たこともあり、いかに桐が素晴らしい材料であるかを少し長くなりますがご紹介いたします。
桐は、いっけん矛盾が多い不思議な木材なのです。理解すれば矛盾していない優秀素材である事が分かります。
このページが桐を選ぶためのお役に立てれば幸いです。
BY TANSU OTOKO
桐は日本の木材の中で1番軽い木材であり、世界中の木材10万種の中で2番目に軽い木材です。
世界一軽い木材は、バルサ材です。
しかし、木製家具として末永く使える世界一軽い材料は「桐」となります。
木材の比重では、
キリ : 0.19~0.30 g/cm3
バルサ : 0.12~0.20 g/cm3
となっています。
ご参考までに、日本一の生産量の木材は「杉」ですが、その比重は 0.38 g/cm3
では何故、バルサではダメだったのか。杉より桐が良いのは何故か。世界第二位の桐が家具に利用されたのは何故か。
それは、バルサは家具材としては耐久性が足りない事。材料が軟らかく釘打ちやネジ止めが不向きなため使用されていません。
杉材は一般的に使用されますが、狂いや割れが起こりやすく、桐のような安定性には欠けます。
桐材はバルサに次ぐ軽量材でありながら、強度をもち、材料の狂いが少ない事で家具を作ることに最も適しています。
桐は以前、ゴマノハグサ科の植物分類下のキリ属にあり、草系の分類とされていました。
草ですよ! "木"と"同"じ と書いて「桐」
ゴマノハグサと聞いて、胡麻を想像しませんか?
そうです! 兄弟にあたりますね。
シソ目のカテゴリ下に、ゴマ科とゴマノハグサ科などがあり、このゴマノハグサ科キリ属に桐が分類されていました。
しかし、1998年頃からミクロなゲノム解析から実証的に分類体系を構築する被子植物の新しいAPG分類体系によると、桐はシソ目キリ科として明確に分類されました。
つまり、シソ目のカテゴリ下にゴマ科、ゴマノハグサ科、「キリ科」と分類されました。
祝! 独り立ちですね ! キリは落葉広葉樹です。
独立気泡構造とは、桐にみられる特殊な繊維構造の事です。通常の木材繊維は縦方向の繊維が並んでいますが、桐の場合は縦繊維に混じって泡のように気泡があります。
桐の最大的魅力がこの構造にあります。 以下で解き明かします。
世界での学名: Paulownia tomentosa パウロニア トメトンサ (またはポロウニア トメトンサ)
日本での学名: 桐 (キリ)
中国での学名 : 泡桐 (Pāotóng パオトング)
その他の海外での呼び名
・princess tree
・Empress tree
・Paulowniaceae
・Foxglove tree
・白桐
・榮
【品種】
日本で栽培されている桐の主な種類は、ニホンギリ、チョウセンギリ、ウスバギリ、ラクダギリ
【違った品種】
アオギリ(青桐) これは桐とは全く別もので植物分類科目から違います。
桐の原産地は中国と言われ、中国から元株が回っていったのではないかと考えられています。
国内の桐も中国から回り自生したと考えられています。
国内の桐生産量の統計は1955年から存在しており、国内生産量のピークは1959年で、以降、国内生産量は減少しており現在はピーク時の2%程度と言われています。
輸入桐材の輸入量が増加し始めたことで国内の生産量が下がったのは理由の1つとしてあるでしょう、その他にも高齢化や後継者問題、様々な要因があったと思います。
しかし、桐材が使い続けられている事実があるのは、材料として評価がある為です。
実は木材使用だけではなく、桐には大きな役割がありました。それは生活基盤になる田畑の保護。中国では桐は田畑を守る防風林として使用されていました。
日本でも、岩手県の南西部に位置する胆沢町では、水田地帯に屋敷林(エグネ)で囲まれた民家が点在しています。
エグネは、季節風から屋敷を守る防風林として大きな役割を果たし、樹木の種類として杉を中心に栗・桐などが植えられていました。育った樹木は、家屋改築時の用材として使われ、枯れ葉は燃料や肥料として使用されます。
国内では、「会津桐」 (福島県)、「津南桐」(新潟県)、「秋田桐」(秋田県)、「南部桐」(岩手県)などが主産地として知られており、実際は北海道から鹿児島まで広く分布しています。主産地の桐材の評価が高いのは、寒冷地で樹木の成育が遅く木目が詰まった美しい桐材である事が評価されています。
桐の世界市場では原産地である中国が大きいシェアを誇っています。その他、アメリカ、カナダ、台湾、ブラジル、パラグアイ、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド、フランス等に自生や植林が進み、土壌や気候の違いからか生産国それぞれの木材特徴も感じ取れます。
そして桐材の中でも特に評価が高い木材は天然の北米桐。硬度、色、艶、軽さが桐の中でも群を抜いて評価が高く、国内桐の生産者も北米桐は素晴らしいと称賛しています。
北米桐を使用した桐たんすが、献上された過去があるほど大変評価されています。なお国内桐では会津桐が評価されています。
「桐は、火に強く燃えない」って聞くことはありませんか? これは間違いです。燃えます。
桐の熱伝導率は0.063kcal/mh℃、スギでは0.12kcal/mh℃。熱伝導率の値が低いと熱が伝わらないため、熱が表面に留まり温度が上昇し発火します。
つまり、他の木材に比べ桐は燃えやすい傾向にあります。
しかし、桐の木繊維は独立気泡構造となっており細胞の壁が薄く、空気をたくさん含んでいます。
空気は燃えないため、空気( 0.0223kcal/mh℃ ) が多いと熱の伝わりかたが遅くなり、表面が着火点を迎え、炭化層ができることで桐材心部への熱浸透を抑制していると考えられます。
桐の着火点 270℃
桐の発火点 425℃
杉の着火点 180℃
杉の発火点 240℃
( ※着火源によって可燃物が燃え出す温度を着火点、ふく射熱で燃え出す温度を発火点と呼びます。)
とは言うものの、一般的な炎は1000~1200℃なので桐でも燃えちゃいますね。
では何故、桐が燃えないと言われたのでしょう、何かの事実となる理由があったからだと思いませんか?
では、ここで問題です。
Q. 桐たんすは、あるものを防具として纏うことで、驚きの耐火力を持ちます。さてそれは何でしょうか?
是非考えてみてくださいね。 答えはこのページにあります。
桐は、断熱性があり大きい熱を受けてもとても割れにくい素材で、また煙も少ない特性があります。
昔から、桐板を使用する前に捻れや歪みをとるため、炎や熱で暖めて捻れを補正して使用されることがあります。
この熱を受けても割れにくいという性質のおかげで、火災時も割れ目が生じにくいため内部を守れる可能性が高まります。
桐の防腐の要となっているのがタンニン。 タンニンとは、種子に多く含まれる渋み成分のことで一般的にカテキン、フラボノイド、ポリフェノールを含む物の総称です。
タンニンは木材の腐敗を抑制します。防虫性・抗菌性としてセサミン、パウロニン、グリメノールを含有しているため害虫や菌を抑制します。 自然の恵みで備わったこの3点が桐の代表成分として、防腐・防虫・抗菌効果をもたらしています。
桐は木材の中で防虫性は高いのですが、天然木材のため100%の防虫性ではない事をご理解ください。その為樟脳などの防虫剤を併用される事が通常の使用方法となります。
また製材工程で適切な木材処理を怠ったり使用部位が悪いと混入する可能性は上がります。木材処理や養生が完了すれば害虫は外へ出ますがその周辺部位を使用しない事が重要です。
大切な衣類を守るために、高気密で材料品質管理の行き届いた桐たんすをお選びください。
桐は木材では珍しく、弱アルカリ性質pH7.0~7.5 を持ちます。一般の木材は弱酸性にあり、pH4~7の範囲にあります。
そして収納する着物に使われる、絹の糸は、蚕(かいこ)という虫の繭(マユ)から作られるため動物性タンパク質となり人肌と同じ弱酸性。
ウールやカシミヤ・毛皮やレザーなどでできた衣類も同様に弱酸性。
桐は、板材に加工しても中性~弱アルカリ性で留まるため、桐たんすの中に弱酸性のものを入れることで酸化が進みにくくなり劣化を抑制する働きがあります。
古くから収納に桐が使われてきたことは、このような科学的な根拠があったのです。
桐材に、過酸化水素や次亜塩素酸などの漂白剤が使用され、pHが極端に傾いてしまえば本来の機能性は発揮できない恐れがあります。
イベント会場で、あるお客様から「桐は水に強いって聞くのは、撥水性があるからですよね?」と尋ねられたことがあります。
「いえいえ、そんなことはありませんよ。」とお伝えしたところ、お客様は「だってね、水害にあった桐たんすが無事だったって言うじゃない?」
確かに豪雨や津波で水害に遭った桐たんすの中の物が無事だったと言うことは多々耳にします。これは噂ではなく事実です。
今ではウェブ上で検索すると確認する事ができるかと思います。テレビでも報道されています。
私達の専門的な見解をお伝えすれば、桐は比較的油分が少ないため撥水性はありません。桐表面の吸水性は高いため変化を起こしやすく、水に弱いと言えます。
しかし、この吸水の働きは、桐の繊維構造の働きによって、桐表面に触れた水分は瞬時に表面を這うように広がる""だけ""となります。
桐繊維は独立気泡構造で空気を多く含むため、その働きによって桐材心部へ水分が到達するにはかなりの時間を要します。その為、芯部への浸透性は低く水に強いと言えます。
桐材の表面だけで考えれば水に弱く含みやすい。厚みのある桐板で考えれば、浸透しづらく水に強い。
桐の繊維構造の相反する性質が、「桐たんすとして水害に強い」と言う結果をもたらします。
(※「桐は燃える」のカテゴリの答えは「水」になります。)
桐たんすが火災に強いと言われる要因は、着火点や発火点が高く、熱伝導率が低いため表面のみが炭化しやすく燃焼を妨げています。
また燃焼した桐は多くの水分を取り込むことが出来ます。 消火活動によって水がかかると瞬時に水分を吸収し耐火性となります。
水分と熱によって桐は膨張し、たんすの隙間を塞ぐため水分の侵入を抑制します。 桐の浸透性は低いため、消火中の水分が桐たんす内部に浸透しにくいと言うわけです。
桐たんすは火災には強いと言えるでしょう。
調湿とは、大気中の湿度が高いときや低いときなどに湿度を調整する言葉として用いられています。
調湿性とは、調湿できる性質を持つことを表しています。
桐は水分や湿気を素早く吸収する事ができます。表面についた水分は独立気泡構造により心部への浸透は抑えられ横へと広がります。薄く横に広がった水分は温度により素早く蒸発を始めるため調湿性に優れた性質を持ちます。桐たんすは気密性を保つことによって、引出内部への湿気の流入を大きく軽減しています。桐は水分を含みやすいため湿気が多いときには桐が膨張し、たんす本体と引出の隙間を狭くすることで湿った空気の流入を抑制します。逆に湿気が少ない場合には、収縮し湿気を放湿するため調湿性に優れています。
木材全般に言えることですが木材は調湿性を備えており、家に木製家具を置くことで家具が室内の温度や湿度を緩和してくれると言われています。
湿度は窓換気や換気設備で制御することができますが、住宅内の内装に木材などの吸放湿性に優れた材料が多く使われているとさらに室内の湿度の変動は緩和されます。
近年、住宅の気密化が進むに伴って、湿度が原因で結露しカビの発生が問題となってきています。着物に関わらず衣類の大敵であるカビは湿度65~85%でとくに繁殖しやすく、高気密住宅では、従来の伝統的な砥粉仕上げの桐たんすにとっては、とても厳しい環境であると考えています。その為、現在は防かび撥水処理など加工が施される製品も存在しています。当社は、その時代背景を早々と予見し、数十年前から表面の塗装方法の開発に取り組み「表面特殊加工」を発案、カビや手垢が付きにくいため扱いやすいと多くのお客様から大変好評を頂いております。
保存科学では、モノの保存には湿度が一定に保たれることが必要であるとされ、湿度の大きい変化は着物など収納物に負担をかけ、乾燥が酷いと絹がパサパサになって艶がなくなり風合いがかわってしまいます。乾燥が酷いと、縫い糸がもろくなって着用しただけで糸が切れてしまったり縫い目が裂けてしまう場合もあります。
桐たんすの引出の湿度は年間を通して、50%(±10%以内) で保たれます。またその変化は緩やかで着物や紙、湿気に敏感なものに対してとても優しい自然の機能性です。
※調湿性の類義語として、恒湿作用(こうしつさよう)とも言います。恒湿作用とは、木材が湿度変化に対応し、湿気を吸放出することで湿度の高低を緩和する能力で調湿性と類似します。
成木までに50~100年もの期間を必要とする広葉樹の中で、桐はとても成育が早く15年から25年で成木するため循環性が高く、資源活用が可能な自然素材です。
日本で多いスギやヒノキは九州の場合で40~50年程度で成木となりますので、いかに桐の成育が早いかがおわかり頂けるかと思います。
その循環性の高さは注目され、中国を始めフランスやニュージーランドなど世界的に桐の生産が進んでいます。
温暖化問題が注目される中、大気中から二酸化炭素を取り除く方法の1つとして植物を利用する方法を聞いたことがありませんか?
植物は成長過程で二酸化炭素が必要です。太陽からの光エネルギーを利用して、大気中の二酸化炭素を分解し酸素を放出し、炭素を蓄えて成長する働きがあります。いわゆる光合成の働きです。しかし、植物が生成する酸素量と植物が消費する二酸化炭素量と、さらに木材利用され焼却までを考えると、吸排出は同等程度となり温暖化抑制の効果としては薄いと考えられます。 そのため温暖化で本当に重要なことは化石燃料の使用を減らすことが重要だと言われています。
木材のエネルギー利用は、大気中の二酸化炭素濃度に影響を与えない「カーボンニュートラル」な特性があるので環境に優しく化石燃料の使用を抑制することができます。
また木材は、鉄等の資材に比べて製造や加工に要する電気エネルギーが少なく済むため、製造・加工時の二酸化炭素の排出量も抑制し省エネ社会に貢献しています。
※このカテゴリー内の文章に誤りがございましたので訂正致しました。
正確に言えば、産地や品種による個性があります。品種ごとの細かい説明までは出来ませんが、当社で取扱している、国内、中国、北米、この3カ所の産地でご説明します。
まず、桐は品種や水質や土壌など成育環境の違いがあるため、この限りではなく一例であることを予めご理解ください。
国内桐は、しなやかで強く、木目が繊細で冬目はややグレー系に感じることもあります。
成育期間も20~30年前後と長く、管理も行き届いているため繊細で美しい木目を感じ取れます。
北米桐は、木らしい桐と言えるほど、桐の中でも硬度が高く軽量で冬目ははっきりとした茶色系。
30年~40年前後の自然成育が多く、木目は多く細かいが、人の手があまり入ってないため柾目は希少部位。全体的にワイルド系です。
中国桐は、少々柔らかく、他の桐に比べやや黄色みがあり、冬目はふわりとぼんやりしている事が特徴です。
量産が進んでいるため、伐採期間まで10年前後と早い事によってコスト面では優れていますが、品質格差がとても大きいので中国桐はグレード分けされ、AA材 A材 AB材 B材 C材と分けられます、そのA材以上が良材柾目となります。
この他にも焼桐に加工した際にも個性が表れます。
国内桐、北米桐は、やや赤みを持ったブラウン色になる傾向があり、中国桐は落ち着いたシックなブラウン系になります。
桐は音響特性に優れています。 日本の伝統楽器の1つ、琴に使用されています。琴の胴部分には、桐の木をくりぬいたものに裏板がはられており、弦を弾き、中の空洞部分で音を響かせる構造になっています。周波数特性から考察すると中帯域に個性を持つ楽器です。良質な桐は木材共振に優れており演奏の表現力を豊かにします。この事からスピーカーへの応用やアコースティックギターやエレキギターにも採用されています。いずれも硬度の高い良質な桐材は楽器用途に向きます。一方軟性のある桐材は吸音性を持つため防音の観点で着目されています。難点として耐久性おいて問題があるため普及しないのが実状です。
木材は呼吸していると言われますが、厳密に言えば間違いにあたります。土に育った植物は呼吸しています。
土から離れ、木材となったときは呼吸はせず、環境の湿度変化に応じて水分を含んだり放湿したりする事で、伸縮が行われるため、その様子を「呼吸している」と比喩的に例えられていることが正しいです。その為、木材が呼吸をしているという表現は通説であるため、表現の理解があれば間違いではありません。
例えば、サイコロのような六面体の木材の伸縮を止めるには、理論上は面の全てを水分の環境変化から完璧に遮断することが必要です。一面でも空いていれば呼吸を行うことが出来ます。
桐も同様に環境の湿度変化に応じて桐材が伸縮し呼吸をしています。呼吸している様子は引出と本体の隙間に現れやすく、湿気の多い時期と乾燥時期では隙間が違う場合があります。
例えば、引出と本体棚板の隙間が、1mmの隙間があったとします。高湿度時期には隙間が0.5mmに縮まり、乾燥時期は1.5mmに開く。適湿時には1mmに戻る。このような働きが桐たんすに起こります。分かりやすく例えましたが、実際にはこのような大きい差はありません。桐材の変化伸縮率は0.3~0.5%と大変少ないためそもそも精密に家具を作ることが出来ます。微々たる桐の呼吸作用が湿気の流入を阻止します。
日本風土の特徴として高湿度になる梅雨がありますね、一方冬は乾燥環境となります。この環境変化は木材の経年劣化に繋がります。
木材は環境変化に応じて、呼吸をするように伸縮を繰り返しています。伸縮を繰り返しているうちに、含水率が下がり木材は縮んで行くのが一般的です。
桐たんすに使用される桐材は、比重が小さく、含水率が低いため伸縮を繰り返しても安定的に状態を保ちます。
他の木材に比べ数十年単位で狂いが少ないのは桐たんすの魅力です。
桐のホッとする触り心地は、温度の同調性に優れているためです。瞬時に人の体温と同調する働きがあります。
暖かく感じるのは、その働きによるもので熱伝導率が良く感じますね。
このページをご覧頂いている皆様は、ここで少し矛盾が生じている方がいらっしゃいませんか?
当ページの「桐はよく燃える!? 」のコーナーでは、伝導率が低いと明言しています。
実際に私がそうでした。「同調性が高い」「燃えやすい」と言うことは熱伝導性が高いのでは?
なのに「伝導率は低いと明言」これはどういうことでしょうか。
以下でご説明いたします。
暖かさを感じるほどの体温同調性があるのに熱伝導は低い。これは難解ですよね。
この現象についてご説明いたします。桐の熱の伝導率が低いことは間違いありません。
暖かさの鍵になるのは、桐の繊維構造である独立気泡構造による多孔質の働きです。多孔質には空気が存在し、発泡スチロールや発泡ウレタンと似た構造となります。
発泡スチロールを触ると分かりますが、冷たく感じないですよね? これは、多孔質に溜まった空気と体温が反射して瞬時に同調しているためで、桐でも同じ事が起こっているということです。 解決していただけましたでしょうか?
この他に、水に弱いのに水害に強いもありましたね。いっけん矛盾に感じることも、深く知ればそこには理由があるものです。
一般木材は天然の素材ですが、実はその中には本来、樹木として生育する上で必要なホルムアルデヒドをはじめとする多様な揮発性の物質を微量に含んでいる木材も存在します。
桐にはそのホルムアルデヒドがほぼ含まれておらず安心してご使用いただけます。
ホルムアルデヒドとは、シックハウス症候群の原因物質、家具や建築資材、壁紙を貼る為の接着剤などに含まれている化学物質の一つです。
このため安全基準が設けられ、国内では室内濃度基準が30分平均値で0.08ppm(0.1mg/m3)と定めています。
シックハウス症候群 の症状には
・目やのど、鼻、皮膚などの刺激や乾燥
・精神的な疲労感
・眠気がする、無気力になる集中力の欠損
・頭痛やめまい、吐き気
・鼻水やなみだや咳
当社では、家具用接着材となる木工ボンドには、JIS規格 室内施工用接着剤のホルムアルデヒド放散等級区分「F☆☆☆☆」を使用しています。
「F☆☆☆☆」とはホルムアルデヒド放射量が、平均値0.3mg/L以下、最大値で0.4mg/L以下である事が義務づけられています。
2021/07/09 追記:
焼桐集成材(木工用ボンド使用時)の試験データを収集しましたので公表致します。
試験サイズは、約140mm×150mm×厚9mmの検査基準に準じて測定。
結果は、
0.01 (mg/L)
F☆☆☆☆放散量の0.4mg/Lを遥かに下回る好成績となりました。
桐はスギやヒノキのように明らかな香りはありません。人によりますが、桐は優しい甘い香りを感じられる方が多いです。繊維構造が独立気泡構造のため空気を多く含んでいるので、桐は香りを吸着しやすく住環境と馴染みやすいです。このため家具でありながら私達の環境の方に溶け込んでくれます。人と自然に馴染める自然な香りは桐の魅力かもしれません。
引出内部では、桐繊維内に防虫剤等の香り成分や防虫成分が蓄えられ穏やかに効果を発揮していることが考えられます。またその匂いがたんすの外に出にくいのは嬉しいことです。
焼桐 (炭) は優秀だと考えられます。一般の炭や活性炭の働きは、知られているように「消臭・調湿、土壌改良、有害な化学物質吸着、空気・水質浄化」など生活環境改善機能に優れています。優秀な炭で言えば竹炭が有名ですが、桐炭は細胞壁が薄く多孔質で柔らかく竹炭同等または上回るのではないかと言われています。
炭化した焼桐のたんすは微力ながら室内の温湿度の変化を穏やかにし、マイナスイオンによって空気を浄化する作用があると考えられます。
桐は復元力が優れており、ヘコんだ部分に水を含ませアイロンで熱を加えるとまるで魔法のように正確に戻ります。仕組みとしては、水分は桐を膨張させ、水蒸気が桐を押し上げる作用が起こるため元に戻ります。繊維破断をしている大きいへこみの場合は破断痕が残りますがそれでも平らに戻す事が出来ます。
砥粉を使用した伝統仕上げの桐たんすは、水を絶対に使用できません。その為復元作業は出来ませんので購入先の専門家にご相談ください。
なお、当社の表面加工は復元出来ますが当社までご相談ください。
鳳凰は中国神話の伝説の鳥とされている。古来中国では徳のある優れた王が即位すると、良い事が起こる前兆として鳳凰が現れると伝えられていました。この鳳凰が宿る木として神聖視されたのが桐です。この事が日本に伝わり、天皇の衣類や調度品に桐や鳳凰の紋様が使われ、桐花紋は菊紋に次ぐ、格式ある紋装飾やシンボルとなり、物語・説話・説教などでも登場するようになりました。手塚治虫氏が漫画「火の鳥 鳳凰編」として題材に使用していました。 文化財には、金閣寺屋上、平等院鳳凰堂屋上に像があり、身近なところでは一万円札にも描かれています。花札にも「桐に鳳凰」があります。
その鳳凰のモデルとなった鳥は諸説ありますが、マクジャク・セイラン・ケツァールなどと言われています。
桐は神聖な木とされ、日本で格式高い特別な家紋として存在しました。
鎌倉時代には、天皇家が着用する衣に桐紋が使用されることで「桐紋=皇室」と位置づけされ「菊紋」と並び「桐紋」も皇室紋として使用されていました。
桐紋は戦国時代頃から天皇家から身分の高い者へ与えられ始めたと言われています。豊臣秀吉が使用していたのは桐紋です。
明治時代以降から現在においても日本政府の紋章に「桐紋」が採用されています。公的機関のシンボルとして「五七の桐」が現在も使用されています。
身近なところでは500円玉にも桐のデザインが描かれています。
医者ではないため参考までにお読みください。
ご自身で実践されて症状が悪化する場合があるかも知れませんので、ご自身の判断では行わないでください。
ご興味がある場合は専門家に必ずご相談ください。
桐は薬用植物として使用されることもあり、痔、打撲傷などには煎じた液を患部に塗布し治療します。
乾燥した葉や枝を煮詰めた液体で頭皮を洗うと養毛になるとも言われます。
根皮を乾燥して煎じた液を、リューマチなどの足の痛む場所に塗布すると緩和します。
乾燥した実を煎じて服用すると気管支炎に効果的です。
などと言われています。 重ねてになりますが、桐たんすの専門家のため、医者ではございません。
ご自身の判断では行わないでください。医師にご相談ください。いかなる場合でも責任は負いかねます。
桐は木炭 (備長炭) に比べ、遠赤外線の積分放射率が高く、マイナスイオンは2倍と結果が出ています。
遠赤外線試験結果:
「桐」 79.2
「焼桐」79.9
「木炭」78.3
マイナスイオン試験結果:
「焼桐」平均値 0.08
「木炭」平均値 0.04
遠赤外線やマイナスイオンは近年では研究が進んでいます。一般に遠赤外線の効果として細胞と共振して発熱する原理があり、遠赤外線が体の血行を良くするなど言われており、皮膚の表面から熱だけ伝導する温灸やお灸よりもよりすぐれた効果があるとのこと。 マイナスイオン効果の代表的なものは、ストレス軽減効果・リラックス効果・空気清浄効果・成長促進効果や寿命を延ばす効果・鮮度保持効果・カビ分解・うるおい効果・静電抑制などあげられます。
この数字が医学的、生物学的にどのように作用しているかは正しくは分かりかねます。
桐の開花は、全国平均で4月~5月です。 当社の敷地で桐を栽培していますが、見頃はおおよそ4月中頃~4月末ごろが見頃です。
桐の産地である、奥会津の三島町の観光サイトによると、5月中旬頃から5月末にかけて見頃のようです。
当社は九州の福岡県南部に位置する三潴郡大木町に本社があります。
当社の見頃が4月中~下旬、東北の奥会津が5月中~下旬である事から、桜前線のように桐前線が動くのは4月から5月にかけて鹿児島から北海道まで順番に北上していることが考えられます。桐の花の香りは、藤の香りに似ているような感じもします。藤の開花時期と近く色や雰囲気が近いため、桐の花は「逆さ藤」とも例えられます。
当社近く10分程の所に、樹齢約300年になる福岡県指定天然記念物の「中山大藤」がありますので、シーズンにお越しの際は、是非当社へもお立ち寄りください。
江戸時代頃には女の子が生まれると桐の木を植える風習がありました。桐の成長が15~25年で成木となることから、その子がお嫁入りする際に伐って、たんすや長持を作り、嫁入り道具として持たせるためでした。それから、昭和時代かけて桐たんすは婚礼家具の代名詞として定着しました。現代では桐を植えることはほとんどないですが、大切な娘を想い今もその風習はわずかながら続いています。
婚礼で必要とされる代表的なものは、婚礼家具として、桐たんすと鏡台。そのほか、婚礼布団や冠婚葬祭で着る「黒留袖」「喪服」「訪問着」などのお着物です。
とあるお客様がご家族で来店された際の会話で「娘様:お母さんが婚礼で必要だって言ってた物は、その時に揃えておけば良かった~」「お母様 : 家電はいつでも買えたやろ~いいものを揃えとかやんやったね~」と言われていました。
確かに結婚するかたは目の前の事に目が行きがちで、長い人生を経験しているお母様のアドバイスは目線が違い的確です。そう考えると、お母様の生活の経験が婚礼に必要な風習を作っているのだなと感じました。
強烈な生命力を持つ桐。 安易にキリを植えてしまうと大変です。たった一夏で1メートル以上の成長をする事もあります。幹元の立ち上がりから切り倒したところで、桐はひっきりなく生えてきます。切り倒した桐の根が広く張っていると、次々に新しい幹が成長します。安易な栽培は、桐だけにキリが無いと笑えないことになりますので植えられる場合は専門家にしっかりご相談してくださいね。 この生命力の強さこそ、桐が軽量で強度を持つ秘密なのかもしれませんね。
近年の種子技術研究によって桐を利用しCO2削減にも貢献できる桐が誕生しています。桐の品種掛け合わせて早生種の研究を重ね、改良された品種は5年程度の短期間で成木になります。品種改良された桐は、山に木を植えて育てる林業とは違い、畑で樹木を育てます。(※畑で育てるから全て品種改良と言うわけではありません)
現在のこの改良桐材が世界中に増えてきています。成育が早いため木目がとても粗いのが特徴です。改良材を取り扱う海外の業者さんに聞いたところ、下位グレード材は、建設資材としてコンクリートの当て木など、使い捨ての用途に回っていることもあるとのこと。
一般の方は見た目上分からないのですが、私達が見極める第一手として、桐材がパサついていたり、木目が広すぎたり、極端に軽い・柔らかい場合は改良材ではないかと考えます。
正品種、改良品種に関係なく良材として見極めるには経験が必要です。桐材の木肌や硬度や密度を感じ取り、カンナを引けば確信にかわる経験があってこそ。品質を間違いなく判断出来るのは職人の長年の経験に基づきます。
改良桐が一概に悪いのではなく、改良された桐で救われていく事柄も増えてくるのではないかと思います。
その桐材を適材適所、正しく使用することが重要であって、建築資材や工業用、肥料など、循環性の必要がある製品には向いているのではないでしょうか。桐たんすに応用出来るのかと疑問になると思いますが、改良品種の種類や、水質・地質・成育環境、使用部位によりますし、品種改良だから質が悪いとは言えず、将来は誤解に繋がる可能性があります。コスト面で圧倒的に優位性をもつため、すでに実際に安価な桐たんすに使われていることもあります。
1つ確かに言えるのは、正品種は軽くて硬くて丈夫で艶が違います。桐たんすに使用するには確かな桐材品質が重要です。
これまでの歴史で桐が使用されている物をご紹介します。意外と様々な用途で使われていますので思い当たるところで記します。
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桐たんすはパフォーマンス(性能)が良いことはある程度おわかりいただけたと思います。 やはり気になるのはコストですね。
桐たんすはやはり高額です。 物によっては新車一台買うことも出来ます。 しかし車と違って動く事はありませんので数十年単位でご使用いただけます。
その中でも比較的にトラブルが少ない30年の期間で一日当たりの桐たんすのコストを計算してみます。
桐たんすの平均相場は80万円~100万円ほどとなっていますが、今回は背伸びして120万円(税込)で換算してみますね。
長引出6杯・小引出3杯・戸袋つきで、10箇所に収納出来る標準的な桐たんすを購入したとしましょう。
30年=10950日 (うるう年割愛します)
1,200,000÷10950 =約110円/日 (四捨五入)
たんす一棹で 110円/日(税込) です。電気代も掛かりませんので110円です。収納エリア1カ所で、11円/日となります。
メンテナンスもさほど必要ありませんが以下のことを心がけておいてください。
私達が、他社製の桐たんすの再生を行っている事で分かることですが、桐たんすで20年~30年以降で少しずつトラブルが出始めているように感じます。
板割れやトノコ剥がれ、シミ、そしてカビです。カビは、伝統的な砥粉塗りの製法の桐たんすによく起こります、カビ菌は室内に浮遊しているため、桐たんすに付着することで繁殖してしまいます。カビはやっかいで一度繁殖すると根絶が難しく、砥粉塗りの桐たんすでは部分修理が綺麗に行えない場合がありますので、伝統的な桐たんすをお求めの際は換気を心がけてくださいね。本体裏壁、引出底板の板の割れは、木材の性質上仕方のない事なので気付かれましたらすぐにメンテナンスをしましょう。
割れに強いパール合板(総桐合板)を使っていればより長持ちしますよ。
年に一度、カラッとした日が続いているときに、たんすの引出を抜いて奥を覗いて割れがないか調査しても良いかもしれません。
※引出は精密に出来ていますので、確認が終わったら必ず同じ所に引出を戻してくださいね。
桐たんすが不具合を起こしていれば衣類を守ることは出来ません。発見されましたら早めに購入先にご相談されることをお勧めいたします。
桐の国内最良の桐材は会津桐と言われています。しかし、国内の桐生産者からみて北米材はとても素晴らしい桐だといいます。
中国桐も量産が始まる前の評価は高かったと言われています。
結局の所は、〇〇産地だから粗悪材とはなりません。
最良の桐材となるには、成育環境である土壌や水、製材工程や養生工程を正しく得ることがとても重要です。
桐の品質についてはこちらでも記載しています。→こちら
ここまでお読みいただきありがとうございます。 十分桐についてご理解されたと思います。
たとえ桐材でも加工が悪ければ、湿気を受け取るただの桐トレイにしかなりません。
どんなに優れた桐材があっても、それを活かす職人の手が必要です。湿気の流入を抑制する精密な技術、的確な密閉力を持たせる事が桐たんす職人のお仕事です。